突破口

夢の中で車を運転して家路についていた

夕暮れ時だった 

道の突き当たりに朱塗りの大きな門が見えた

門の後ろには光が届かないような

鬱蒼とした森が控えている

 

ウインカーを右にして家に帰るつもりなのに

ウインカーが動かず視線を前に戻すと

朱塗りの門を潜る道以外が消えていた

 

門を潜ると道が左右二股に分かれる

直感では左と思った

 

でも左は鬱蒼とした森で

右は明るく人の気配がある

ちょっと怖いからやっぱり右かなと思った瞬間

 

車は勝手に左に曲がり運転は制御不能になった

そこから物凄い加速が始まる

狂気的なスピードなのに

自分では制御不能なのに

私は静かだった

 

開いた口が塞がらないくらい

加速により重力がかかり

 

ついに車は道をそれ

奈落の底へ向けて崖をダイブした

 

その瞬間から全てがスローモーションになった

まわりの全てが速度を落として

はっきりと私の目に映しだされる

崖の対岸に

『突破口はこちら』

『突破口はこちら』

と文字がかげられた壁が見えた

 

弾かれないだろうか?と一瞬思考がよぎる

全てが更にストップモーションになって

車ごと壁へ飛び込ん行く

 

真っ暗で

ゼリーの様な 何かの膜のようなところを

ゆっくりと進む

 

体が砂粒みたいな粒子に感じられ

解体されてゆく

 

私はポカンと開いたままの口を閉じる事ができず

開いた口に感覚を集中させていた

 

その瞬間目が覚めた

私の口は現実的にもポカンと開かれたままで

 

目線の先の壁に

オレンジ色の四角が光っていた

瞬きしたらそれは消えていた